NEWSLETTER FROM ON READING 2026.10.30

こんにちは、ON READINGの黒田義隆(義)と黒田杏子(杏)です。なんだかパッとしない天気が続きますね。急に冷え込んだりと、着ていく服に毎日悩んでしまいます(早く衣替えしなくては)。最近は思いがけない仕事の依頼が立て続けに舞い込んできて、またまたすっかり忙しいモードになってしまいました。嬉しい限りですが、なんとか体調崩さぬよう頑張らねば。みなさんも季節の変わり目、どうかご自愛ください。(義)
NEWS

渋谷のMINAにてTEMPORAのPOPUPを開催中です。
前期のコラボレーションアーティストは、ELVIS PRESSでもお馴染み、村橋貴博さん。新シリーズの連れていける(?)DOROTHYシリーズ『BYBIPEDS』も並びました。ぜひご覧ください~!Tシャツやキーホルダー、日めくりカレンダーなどのコラボレーションアイテムもお見逃しなく。
MINA展示企画vol.3『MINA COLLECTION STORE』TEMPORA、PAPIER LABO.
会期:<前期>2026年10月16日(金)~11月23日(月祝) <後期>11月27日(金)~12月27日(日)
会場:MINA(東京都渋谷区渋谷3-7-1)https://mina-shibuya.org/
詳細:https://mina-shibuya.org/products/minacollectionstore?variant=47949696041014
開館時間:11:00~22:00
コラボレーションアーティスト:
村橋貴博(前期)
渡辺真悠(後期)
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TEMPORA ステイトメント
TEMPORAは、ミュージアムショップを、単に美術館や博物館の「出口」にある販売の場として捉えるのではなく、ミュージアムの可能性をひらく場所として捉えます。
私たちは以下のキーワードを通してミュージアムを考えます。
ARCHIVE / RESEARCH / INQUIRE / LEARNING / EXPERIENCE / COMMUNICATION / CREATION / IMAGINARY
保存し、探究すること。問いを立て、学ぶこと。体験し、共有すること。そして創造・想像すること。これらの言葉は、ミュージアムが持ちうる、さまざまな役割を示しています。「ミュージアム」や「ミュージアムショップ」という既存の枠組みから少し視点をずらしてみる。すると、そこにはどのような新しい役割や可能性が見えてくるのか。
ミュージアムショップは、何を売る場所なのか。
そして、何を生み出す場所になりうるのか。
TEMPORAは、その問いから、ミュージアムショップのこれからを考えます。
入荷情報 PICK UP
・パパ・ユーア クレイジー / ウィリアム・サローヤン(著)、伊丹十三(訳)
お待たせしました。再入荷です!海辺の家で暮らしはじめた10歳の少年と父親。海や月、太陽のこと、そして自分自身や世界を知るということ。ふたりの静かな会話を通して、生きることの不思議や喜びが少しずつ見えてくる。読む時々の自分に、新しい言葉が届くウィリアム・サローヤンの詩的小説が、装いも新たにハードカバーで復刊。
・雑考 4 / 朝倉圭一
飛騨高山で工藝店「やわい屋」を営む朝倉圭一による雑文集『雑考』第4号。観光地に暮らし、古民家で手仕事の品を商う自分自身の立場から、飛騨高山が観光地として形づくられてきた歴史をたどります。観光によって変わりゆく街の風景と、そこに暮らすことの意味。土地の記憶とこれからを見つめ直す一冊。
・食エッセイ考 / 木村衣有子
文筆家・木村衣有子による『食エッセイ考』。食エッセイの傾向や魅力を考察し、北東北の食をめぐるエッセイ3篇も収録。チェーン店やローカルフードを入り口に、食べることと書くことの関係を探ります。
・アウト・オブ・民藝 夢二、湯けむり、ユートピア編 / 軸原ヨウスケと中村裕太
竹久夢二の旅や人物交流を、民藝運動や同時代の芸術運動との関係から捉え直す展覧会図録。全国の温泉地での足跡やモダニストたちとの交流を、豊富な資料図版とともに紹介します。
・新しい人生 小説、エッセイ、日記 / ルシア・ベルリン
ルシア・ベルリンの未収録短編小説に、エッセイ、日記、息子による年譜を収録。創作の軌跡と作家の素顔に迫る作品集。『掃除婦のための手引き書』などに続く小説邦訳三部作の完結編。
・愛 編む こねこ 〜Ai amu koneko〜 / ひがしちか
心臓や感情、愛を表す「ハート」。誰もが知っているそのかたちは、いったい何を象徴しているのだろう。傘ブランド「Coci la elle」を主宰するひがしちかが、20歳のときに思いついた物語を24年の歳月をかけて絵本に。長い時間のなかで育まれた、心のかたちをめぐる小さな物語。
・THE MYSTERIES OF TWIN PEAKS / David Lynch, Johan Chiaramonte, Camille Mathieu
赤いカーテン、ジグザグ模様の床、フクロウの目、謎めいた丸太。デヴィッド・リンチ監督『ツイン・ピークス』を彩る印象的なイメージやモチーフを、300点以上の図版とともにたどる作品集。夢と現実、日常と異界が入り混じる、あの奇妙で美しい世界。物語の謎を解くのではなく、その奥に漂うムードをじっくり味わう一冊。
・ON THE HUNT / Sophie Calle ソフィ・カル
新聞の片隅に並ぶ、結婚相手を求める人々の言葉。フランスの現代美術家ソフィ・カルは、100年以上にわたる膨大な募集広告を集め、そこに映し出された愛や孤独、時代ごとの価値観の変化を見つめます。野生動物の写真と広告を収めたユニークな造本も印象的。誰かを探し、誰かに見つけられることをめぐる作品集。
・FUJI / Fanette Mellier, Clément Vauchez
葛飾北斎『冨嶽三十六景』に着想を得て、富士山のさまざまな表情を36点の写真で追いかけた作品集。光や雲、視点によって移ろう風景が、30色以上のインクを使った実験的な印刷によって、少しずつ色彩を帯びていきます。写真とデザイン、印刷の偶然が重なり合う、眺めるだけでなくページをめくることそのものが楽しい一冊。
・Other Shore / 松尾修
生まれ育った長崎県佐世保市に通い、そこに暮らす人々や風景を撮り続けてきた写真家・松尾修。2023年から2026年にかけて撮影された78点のモノクローム写真を収録。見慣れたはずの故郷の風景が、写真のなかで少しずつ別の世界へと姿を変えていく。記憶と現実、こちら側と向こう側のあわいをたどる写真集。
・THE SMALL BOOK OF ENDANGERED GESTURES / Bruce Eesly
言葉が消されていく世界で、それでも何かを伝えようとする手の動き。ブルース・イースリーが、検閲によって公的な文書から削除された言葉を、AIが生成した不思議なジェスチャーで表現した作品集。人間の手のようで、どこか不完全な指先。言葉と表現、自由とテクノロジーの関係を問いかける、小さな一冊。
・FOLKWAYS RECORDS: A VISUAL HISTORY OF FOLKWAYS RECORDS COVER ART
音楽だけでなく、世界中のあらゆる音を記録してきた伝説的なレーベル、フォークウェイズ・レコード。フォークやブルースから実験音楽、自然音、詩まで、その膨大なカタログを彩ったレコードジャケットを数百点収録。ロナルド・クラインをはじめとするデザイナーたちの仕事から、音楽と時代の空気をたどる、見応えたっぷりの一冊。
・A–Z OF RECORD SHOP BAGS / Jonny Trunk
レコードを買って、店の袋に入れて持ち帰る。そんな何気ない風景のなかにあった音楽文化を、ショッピングバッグのデザインからたどる一冊。1940〜90年代、英国のレコード店が制作した500点以上の紙袋やビニール袋を収録。ロゴやイラスト、タイポグラフィに、それぞれの店の個性と時代の空気が詰まっています。
・マムアンカレンダー2027 / ウィスット・ポンニミット
タムくんこと、ウィスット・ポンニミットが描く、マムアンの2027年版卓上カレンダー。月ごとに登場するマムアンの愛らしい表情や何気ない日常の風景に、英語・タイ語・日本語の3つの言葉で綴られたメッセージを添えて。めくるたびに、心がふっとやわらかくなる一年を。
・Hand Map Calendar 2027 / 生平桜子
暦と地図、どちらも自分のいる場所を知るためのもの。画家・生平桜子が、そのふたつの不思議なつながりをかたちにした2027年のカレンダー。片面には暦、もう片面には地図からイメージしたドローイングが広がります。季節や自然の気配をすくい取った絵と言葉とともに、新しい一年の景色を思い描く一冊。
・ほりはたまお ポスターカレンダー 2027
植物や果実、身近なもののかたちを、シンプルな線と色で描くイラストレーター、ほりはたまおによる、ポスタータイプのカレンダーです。リソグラフで印刷されているので、発色がとてもきれいです。
RECOMMEND BOOK !
デザインは、町のあちこちに潜んでいる。
美術作家でタウンフィールドワーカーの岡美里が、日本各地を歩いて見つけた171の風景を紹介する一冊。
坂道、看板、暖簾、屋根、庭、建築、遊具、オブジェ。一見なんでもない町の風景にも、誰かのアイデアや思いがけない工夫が隠れています。「なんだ、あれ?」「何かに似ている」「どうしてここに、こんなものが?」。そんな小さな疑問を手がかりに、風景に潜むデザインの面白さを探っていきます。
鍵となるのは、あるものを別の何かに見立てる「見立て」という視点。
北海道から沖縄まで、日本全国で出会った有名建築から名もなきデザインまでを、23の切り口からオールカラーで紹介します。
さらに、フィールドワークの心がけや、町歩きの参考になる書籍も掲載。特別な知識がなくても、歩いて、眺めて、見立ててみることで、いつもの景色が少し違って見えてくるはず。散歩や町歩きが好きな人はもちろん、デザイン、建築、工芸、アートに関心のある人や、ものづくりのアイデアを探している人にもおすすめです。日常の風景に潜む発見を楽しむための、町歩きのガイドブック。
枝葉末節な日々
今週の担当:(杏)
10/23(金) 朝、質素グラノーラにバナナ、メロン、ブルーベリー。搬入前にキネマノイで『windows of memories』。愛知芸術文化センターのオリジナル映像作品として制作され、2023年のAFFで上映された作品なのだが、当時は見逃していて(というかAFFにもうずっと、全く行けていない…)今年ようやく劇場公開になったもの。監督の清原惟さんのふたりの祖母に聞いたそれぞれの人生の語りを俳優が朗読をするという”聞き書き映画”。 そこに、祖母の暮らしや過去の写真、時折、実際のふたりの声も入る。夫が亡くなったとき、ようやく柄もののお皿が買えるね、と家族と話したこと。黄色いワンピースを着て歩いていたら、田んぼの向こうからひとりの女性がじっと見つめてきたこと。最後、俳優が原稿を置いて語り出した時、ふたりの祖母の言葉が肉体を持った。テクストを「読む」というパフォーマンス、肉体を通して語るというパフォーマンス。この違いを効果的に取り入れているのは、先日の立石くんと加賀田さんの演劇にも通じる。そういえばその演劇の日、監督の清原惟さんが舞台挨拶ついでに寄ってくださった。清原さんの『すべての夜を思い出す』はジョンのサンが音楽で参加している。映画のなかで、突然亡くなった夫が、最後の日にカラオケで歌った歌が何だったのか、それが気になっている、という語りが出てきた。先日、税理士のKさんからも、同級生が突然死した話を聞いた。いつも通り、普通に会社に送り出して、そのまま。プツンと突然断ち切られてしまった日常は、もう戻らない。日常はひと続きに続いていくのではないのかもしれない。いくつもいくつも道は断線してしまうけど、それはそのままで、生えてきた別の道をなんとか進んでいく。店に戻ってきたら、ほりはたさんの搬入はほぼほぼ済んでしまっていた。夜、よっさんが以前から楽しみにしていたゾンビ映画を観に行こうかと話してたところに野田ちゃんから連絡。超絶多忙を極める野田ちゃんの、仕事と仕事の合間のわずかな時間に、ちょっと会おう!となった。2時間弱しかない~、とよっさんに言うと、十分やろ、と言われる。ホテルまで迎えに行って、ロイホでごはんを食べつつ瑞穂競技場まで送っていくという、大スターとのお忍びデートみたいな時間だったが、寸暇を惜しんでしゃべり続ける。この秋の大一番、アジパラのウェルカムゲートのプロジェクトは、野田ちゃんにとってもエポックメイキングな出来事だったようで、聞いていて思わず涙腺が緩む。誰かの人生を動かすということ。かかわる人数や動く金銭の大小ではなく、ほんとうに、実のある仕事をしていきたい。それだけ。私は鉄板グリルチキン。野田ちゃんはグリルチキンサラダ、よっさんはいつものポークソテー。帰宅後、KOCの続きを観る。
10/24(土) 朝、味噌汁、もち麦ごはん、蓮根とさつまいものさっぱりきんぴら、納豆、メロン。ほりはたまお 個展『Magnolia』 初日。地元開催&ほりはたさんもご在廊くださっているので、古くからのご友人やご親族も来てくださって、終日にぎやか。最近、お父さんを亡くされたほりはたさんのご友人のAさんに、ほりはたさんのご親戚のBさんが、みんな順々にいなくなっちゃうね、寂しいね、と言うと、Aさんはその分、増えたりもするから!と言う。本当にそうだな。また別のご友人が連れてこられた3歳のお子さんが、たまたま居合わせた1歳の別のお子さんを「よしよし」と撫でたり。今日一日だけでも、素晴らしいものをたくさんみてしまった。途中、井戸端会議みたいになっちゃっててすみません~、とほりはたさんは言うが、こんな井戸端会議なら大歓迎である。閉店後、ようやくの『バイオハザード』。もうぐっちゃぐちゃ。無駄にIMAXだったので臨場感が凄すぎて、まじで「ひぃ」と悲鳴をあげてしまった。入り口に「この作品は途中、強い光が明滅します」という注意事項が書いてあったが、グロ描写の方が注意喚起いるんじゃないか。エンディングテーマ曲がキンクスの「Animal Farm」で、そのチョイスも最悪で笑った。ゾンビ映画大好き(正確にはバイオシリーズはゾンビではない、らしいのだが)のよっさんに感想を聞くと、春にはっちゃんに噛まれた時のことを思い出していたらしい。これまでの『バイオハザード』を全く知らない私でも、コメディタッチでポップに楽しめたけど、なんか、ぐったり疲れた。
10/25(日) 今日も、ほりはたさんご在廊日。今回の展示はタイトルの通り、木蓮をテーマにした作品群。テーマにしているとはいっても、木蓮をじっと観察して描いているというのではなく、ほりはたさんがとある木蓮を見て、受けた印象からスタートして、何度も何度も手を動かして探っていくなかで、うまれたかたちを抽出して描いていく。ひとつの印象(あるいはかたち)から、どれだけのイメージがつくれるか、というのも今回の挑戦としてあったとのこと。使う色を5色と定め、限られた色数のなかで踊るシンプルなかたちに、「見てるとなんか、元気出る」とおっしゃる方も多かった。わかる。昨年のTEMPORAでほりはたさんを知ってくれた方もたくさんいて、トートバッグを持ってきてくれたり、「キャップ持ってます!」と言ってくれたり。嬉しい。偶然だったけど、MINAでのTEMPORAのタイミングと重なったおかげで新しくグッズも作れたし、ちょうどよかった。
10/26(月) 今週、書き仕事の〆切が5本あって、10月の頭からじわりじわりと焦っていた。今日〆切のものは先週出していて、水曜〆切のものも今日出せそう。でもまだあと3本ある。月末は、経理仕事もあるし、TEMPORAの準備のあいだ後回しにしてきたあれこれにも着手し始めなければいけないし、あたらしい仕事や仕事になりそうなお声がけも増えてきて、11月の予定も埋まってきてしまった。秋を十全に楽しむのが人生の目標だったのに、そのためにやめたこともあったのに、結局なんだかんだ忙しく過ごしているうちに冬になってしまう。来年こそ、秋に山に行きたい。いよいよ冷蔵庫がからっぽ。夜、冷蔵庫の残り食材をぶちこんで豆乳塩麹鶏鍋。ネトフリで『ロボット・ドリームス』。
10/27(火) 朝、はっちゃんを動物病院へ。先週から血圧をさげる薬を飲み始めたのだが、その薬が合ってるかどうかの確認のため。猫の血圧を測るには、しっぽで測る方法と、腕で測る方法があるらしい。どっちで測られてるんだろうと、診察室をのぞいてみたけれど、肝心の部分はみれず、ただ、はちが撫でられていた。はちの診察室に、やけに人の出入りがあったり、時間がかかっていてそわそわする。くろださ~ん、とようやく呼ばれた。この動物病院は、飼い主を呼ぶとき、ペットを小脇に抱えて出てくる。わかっていてもちょっとびっくりする。どうやら、前回のようには一発でうまく測れなかったようで、すんごい何回も測りなおした形跡がある。ちょっとじたばたしたのだろうか。しっぽも腕もアルコールで濡れているので、両方で測ったんだな、と思う。どっちにしろかわいい。薬も大丈夫そうなのでこのまま投薬生活を継続することになった。帰宅後、昨日の豆乳鍋に黒胡麻、卵を入れて雑炊にして食べる。メロン。常滑の旧青木製陶所へ是恒さくらさんの展示を観に行く。国際芸術祭「あいち2025」の際に展示されていた大規模インスタレーションを再構成し、その後のリサーチも加えた新バージョン。まず建物がすばらしい。土管を作っていた古い大きな窯が真ん中にどーんと残っていて、当時の道具も、そのままに残っていたりする。是恒さんの愛知でのリサーチも、ここから始まった。ようやく、帰ってきたんだな、と感じる。あいちの時は、幻の鯨を再現するようなインスタレーションだったけれど、今回はこの土地に眠っている鯨の断片的な記憶が掘り起こされているような。自然光がもれてきて、布の作品を照らす様は、まるで海底から水面を眺めているかのようで幽玄だった。広い美術館の展示室では、遠かった刺繍が間近に見られて嬉しい。愛知で九州で、思わぬ形で繋がっていくくじらの軌跡。是恒さんのリサーチの旅があますところなく詰まっている。今回の展示にあわせて編まれた新しいテキストがまた、読み応えがすごい。またリトルプレス版で出版してくれるだろうか。その後、岡崎のアンティークショップ、La Trouvaille さんで小林くんの展示。日頃はフランスのアンティークが並ぶ展示室は、真ん中に置かれたモルタルの大きな台があり、その上に、詩と写真で構成された二冊のブックがおかれていた。まるで死者が眠る石室のようだな、と思った。小林くんの声が流れている。どうやら、つぼの中から聞こえているようだ。古の人びとが、岩壁に自分の手を当て、口に含んだ顔料を吹き付けて描いたネガティブハンドの話や、矢萩川の話、光、声、夢。すこしずつずれていく詩の朗読は、先日の立石くんの演劇のようでもあって、置かれたブックを読んでいると、不意に、書かれた言葉が音で聞こえてきたりする。ブックの中と朗読と展示と、詩はそれぞれで断片的にあらわれる。言葉との出会い方が多重的で面白い。今日はふたつとも、テキストを読み込む展示だった。展覧会でテキストを読む、というのはかなりの集中力を要する。けれどその場所でそのテキストを読むという体験ではじめて響くものがある。と同時に、声は、音は、言葉が意味を離れていくことを許してくれる。しばらく、小林くんの声をぼうっと心地よく聞いていた。言葉が置かれる場所についての可能性も考える。お腹が空いたのでずっと行きたかった銀界へ。私はサテ麺汁なし。よっさんは煮干しバターの汁なし。今更何を、なカルチャースポットだが、本当に最高すぎた。レコードと本、美味しいラーメン。大画面でジャズのライブ映像がかかっていて、小粋なバーでライブを見ながらご飯食べてるみたいな気にもなるし、真逆だけど、小汚い大学の部室ですごした時間も思い出す。ラッキーなことにそんなに混んでもいなかったので、コーヒーも追加でいただいて、ゆっくりさせていただいた。
10/28(水) 朝、MINAミーティング。後期の展示をお願いしている渡辺さんとMINAの小田桐さんと。ようやく、展示の概要も定まってきた。渋谷で採集した植物でできた架空の島。渡辺さんの作品世界にどっぷりつかれるスペシャルなお席もできそう。先月、お話を聞かせていただいたMさんのところに行く。文字起こしができたので、内容の確認と、原稿への掲載確認のためだったが、またそこからひろがるお話が次々と出てきて、聞けば聞くほど、Mさんの人生や当時の名古屋が立体的になってくる。幼いころに戦争を体験されていて、その時のお話が本当につらい。「ひもじくてひもじくて、地獄だったよ」とお話してくださる。ひもじい、という感覚、言葉の意味はわかっている気になっているが、今の私たちには本当にはわからないだろう。以前、『Knitting ’n Stitching Archives.』の時にGさんがよく「あんたたちにはわからないでしょう」と言っていたのを思い出す。きっと、わからない。だからもっともっと、聞きたいなと思う。あれこれ話をしていたら、いつの間にか自分の人生相談になっていってしまった。Mさんも辛い体験があって、でも今は、それでよかった、と思っているのだという。「歳月だね」という言葉が重かった。夜、残っていた2種類の鍋のもとを突っ込んで、白菜しゃぶしゃぶ鍋。このところすっかり寒くなってしまったので、早くも鍋ばっかり。調子に乗って食べ過ぎたのか、久しぶりに胃がしくしくする。アマプラで『罪人たち』。
10/29(木) 朝、オンライン打ち合わせが早く終わったので、プロローグでお茶をする。キャロットケーキとコーヒー。いつもこうやって、静かな気持ちで一日をはじめられたらいいのに。〆切もあとひとつになった。夜、来週から始まる『復刊 生きている』フェアに合わせたイベント、佐内正史『復刊 生きている』刊行記念トークの告知を始まると、すぐに予約がどんどこ入るので、帰れなくなってしまった。佐内正史さんと中村一義さんというあまりにもスペシャルすぎる組み合わせで、あの頃の自分が聞いたらめちゃくちゃびっくりするだろう。人生、何があるかわからない。小一時間であっという間に埋まってしまった。すっかり遅くなってしまったので、ごはんどうする?と聞くと、「俺、チキラー!」と嬉しそう。私は先日、Apartment 93E で買った、ヴィーガンのグリーンカレーヌードル。よっさんは、チキンラーメンに八幡屋礒五郎の七味ガラムマサラをかけて、ぶっ飛んでいる。「日清のカレーヌードルになった!」とのこと。あまねさんにもらったこの七味、ちょっとかけるだけでなんでもおいしいカレー味になるので、最近よっさんはお気に入りで、本当に何にでもかけている。
EXHIBITION INFORMATION

ほりはたまお 個展『Magnolia』
2026年10月24日(土)~ 11月3日(火祝)
作家在廊日:24日(土) 14時〜18時 ・25日(日) 14時〜18時
TEMPORAのロゴも手掛けてくれた、イラストレーター、ほりはたまおの個展を開催します。
本展では、“ 木蓮”をテーマに展開したMa g n ol i a シリーズの作品を多数展示。ステンシル技法を用いたオイルパステル画の額装作品を中心に、ポストカードやハンカチ等のグッズも販売いたします。
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散歩の道中、空き家のように見える古い家の庭に、一本の紫木蓮の木を見つけた。
春先だったためいくつか花が咲いていて、上向きにしなやかにひらくその様子、鮮やかな色にとても心が満たされたことを覚えている。
あくる日ふと同じ道を通ると、その紫木蓮は根元の上までばっさりと切られていた。この木の自然的なすがたが途切れてしまったこと
に言いようのない残念さを胸に抱いたが、誰のせいでもなく、仕方のないことだった。
ただ、あの紫木蓮が生き生きとしていたこと、その美しさは確かに私の心を励ましてくれたことを絶対に覚えていよう、絵にしようと
思った。
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ほりはた まお
イラストレーター・作家
1990年愛知県生まれ。名古屋市立大学芸術工学部卒業。パレットクラブスクールイラストコース修了。広告や書籍・雑誌の挿絵等を中心に手がけるほか、展示発表も行う。直近の仕事に、神楽坂麹専門店MUROパッケージイラスト、ON READINGが手掛ける期間限定のミュージアムショップ『TEMPORA』ロゴイラスト、2026年度暮しの手帖社発行雑誌『暮しの手帖』目次絵等。
https://www.instagram.com/horihatamao/

佐内正史『復刊 生きている』刊行記念フェア
2026年11月3日(火祝)~11月29日(日)
写真史に刻まれた名作写真集『生きている』(青幻舎)の、約30年ぶりの復刊を記念したフェアを開催します。
写真家・佐内正史の初めての写真集『生きている』は1997年4月に刊行され、誰も見たことがなかった写真群は様々な反響を呼び、新たな才能を世の中が知るところとなりました。
『生きている』はその後版を重ねましたが、本文に使っていた用紙が生産中止となったことが原因で重版ができなくなり、長らく品切れとなっていました。
しかし、2025年に青幻舎が30周年を迎えるにあたって、メモリアルイヤーのスペシャル企画として、今では手に入らなくなってしまった本を復刊しようというプロジェクトが立ち上がり、読者の皆様からリクエストを募った結果、『生きている』の復刊を望む多くの声が寄せられ、復刊が決定したのです。
本フェアでは『復刊 生きている』の印刷物を使って佐内自らが制作した特製ポスターの展示をメインに、「生きている」の世界を体感できる特別な空間が出現します。
また、写真家/佐内正史、スタイリスト/伊賀大介、TANGTANGデザイナー/丹野真人の3人によるフォトTシャツレーベル「GASATANG」が『生きている』の復刊に合わせて制作したTシャツやトートバッグなどのグッズも展開。
皆様と一緒に30年ぶりの復刊を祝う場になればと願っております。
こぞってお立ち寄りください。

阿部海太 個展『こぼれおちそう』
2026年11月7日(土) ~ 11月22日(日)
※作家在廊予定日:11月7日(土)、15日(日)、22日(日)
絵本や絵画を通して、世界を見つめることの原初的な感覚を静かに呼び起こしてきた、画家・阿部海太の個展を開催します。
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絵を始めた頃から変わらないもの、普遍的なものを求めて描き続けてきたけれど、最近はもう、消えてしまうもの、失われてしまうもののほうにしか親密さを感じなくなってしまった。
表層深く流れる川を覗きこむことより、掬った一匙がただこぼれてしまう様を見ていたい。
そして残らないものこそ、その意味を問いたい。
(阿部海太)
阿部 海太 Kaita Abe
画家・絵本作家
1986年生まれ。埼玉県出身。東京藝術大学デザイン科卒業後、ドイツ、メキシコに渡る。2011年に帰国後、根源的なイメージをモチーフに絵本や絵画作品を発表。絵本に『みち』(リトルモア)、『みずのこどもたち』(佼成出版社)、『めざめる』(あかね書房)、『きょうも かぜは いろづいて』(岩波書店)、共著に『ほっきょくでうしをうつ』(岩崎書店)、『わたしはきめた 日本の憲法 最初の話』(ほるぷ出版)、『なにでもないもん』(岩崎書店)など。『ぼくがふえをふいたら』(岩波書店)で第26回日本絵本賞を受賞。
https://www.instagram.com/kaita_abe_

TOMOTERU NISHIMURA exhibition『Stone of Sisyphus』
2026年12月4日(金)~12月13日(日)
美術家・TOMOTERU NISHIMURA(西村友照)の個展を開催します。
本展では、アルミホイルに包まれた物体を精緻な筆致で描く、代表的な絵画シリーズ『The Thing』の新作を展示・販売します。何かを包み、覆い隠すことで、そのものが何であるかを曖昧にする西村の作品。見えないものの向こう側に何を思い浮かべるかは、鑑賞者それぞれの記憶や経験によって異なります。見ることと想像することのあいだに広がる、西村友輝の作品世界をぜひ会場でご覧ください。
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ギリシア神話に登場するシーシュポスという王は、生前に行った悪行のため、死後、神から罰を受けることになった。
それは、巨大な岩を山頂まで押し上げるという罰だが、頂上まで押し上げたところで岩は転がり落ちてしまい、再びはじめからやり直さなければならないというものだ。
終わりのない労働や成果が得られない行為として、また、世界の不条理との向き合い方について、この逸話が語られることがあると思う。
私は絵を描いている。
描かれるモチーフは異なりつつも、絵を描くという行為の連続性の中に身を置いている。常に次に制作する作品や、描く行為そのものについて思考し、手を動かし続けている。その繰り返される作業の中でしか獲得し得ないものがあると考えている。
それらを他者に伝わるように言葉にし、共有することは難しいと思う。しかし、ある種の連続性に身を置き、その状況を真摯に受け止め続けているのであれば、まったく違う世界にいる者同士でも、共感や感動が生まれる気がしている。
シーシュポスの石の話を初めて知ったとき、私は彼と話をしてみたいと思った。そこには、彼だけが身につけた筋肉があり、体の動かし方があり、呼吸があると思ったからだ。
私はそれを知りたい。
(西村友輝)
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西村友輝 TOMOTERU NISHIMURA
頭の中に立ち上がるイメージを実在するモチーフとして再構成し、それを起点に主にペインティングを制作。アルミホイルで物体を覆ったシリーズ「The Thing」では、対象の情報を意図的に曖昧化することで、私たちがものごとを認識し理解する過程そのものを主題化している。見ることと捉えることのあいだに生じる揺らぎを通して、認識の不確かさと、その先に広がる想像の余白を提示する。現在、関東を拠点に活動。
https://www.instagram.com/tomoterunishimurahomme/
♪ Now Listening
金字塔 / 中村一義
もう30年前か。。。
今週はこのあたりで。
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