NEWSLETTER FROM ON READING 2025.07.11

こんにちは、ON READINGの黒田義隆(義)と黒田杏子(杏)です。暑さも政治も社会も売上も酷すぎてクラクラしちゃいますが、なんとか頑張って生きていきたいですね。こんな時こそ本を読んだり映画を観たりしている時間が救いになったりもします。(義)
NEWS

毎回選挙がこの日本の地獄を確認する装置みたいになってしまって悲しい限りですが、それでもとりあえず投票だけは行ってほしい。未来をあきらめちゃだめ。そもそも人権を蔑ろにするような政治家なんて問題外でしょ! ということで、店頭でいつもの投票ステッカー(イラスト:田口美早紀“おたぐち”)配布してます。これから行く人でも、もう投票済の人でも、投票権ない方でも誰でも差し上げています。会話のきっかけにでもどうぞ。
入荷情報 PICK UP
・tattva Vol.10 わたしたちが普段言葉にする本物について
現代社会に横たわる、いますぐには答えが出せない問題や問いに対峙するために、ビジネス/アート/テクノロジー/ポップカルチャーなど様々な切り口から多様な視点を届ける雑誌『tattva』。これが本物であると、私たちが思えるものは何なのか。
・【サイン本】珠洲の夜の夢/うつつ・ふる・すず / 大崎清夏
作曲家・阿部海太郎の声かけにより、演出・長塚圭史、戯曲・大崎清夏によって2022年、23年と奥能登珠洲で上演された『さいはての朗読劇』全戯曲。
・アイムホーム / 向坂くじら
デビュー詩集『とても小さな理解のための』が各所で話題になり、初小説『いなくなくならなくならないで』が、第171回芥川賞候補作品にもなった、現在最も注目を集める作家で詩人の、向坂くじらによる最新詩集。普段、詩集とか読まないな~という人にもぜひ読んでみてほしい「生活」の詩。面白い!
・〈ていねいな暮らし〉の系譜: 花森安治とあこがれの社会史 / 佐藤八寿子
「モノ」から「モノ・ガタリ」へ。羨望と同時に嫉妬をもかきたてる〈ていねいな暮らし〉は、現代日本特有の文化なのだろうか。花森安治の足跡から中華圏における流行まで、連綿と続く〈暮らし〉へのあこがれの社会史を追った一冊。
・ファッションと哲学 16人の思想家から学ぶファッション論入門 / アニェス・ロカモラ、アネケ・スメリク
アイデンティティ、ジェンダー、美学、モダニティ、創造性、グローバルな流通、経済、生産と消費……現代社会の最重要テーマをファッションを通して考えることでファッションの理論化とそのアップデートを目指し、同時にファッション(デザイン)批評の実践をもおこなう、ファッションの理解と分析を深めるための、基本的かつ決定的一冊。
・松本剛漫画集『 ハナモモ 』 / 松本剛
『甘い水』や『ロッタレイン』などで少年少女の痛みと瑞々しさを描き続けてきた漫画家・松本剛の短編漫画集。単行本初収録作品を含めた計9編の傑作。胸がキュンキュンしっぱなしの青春漫画の金字塔。
・ちょうちょ ちょうちょ / きくちちき
ブラチスラバ国際絵本原画展で2度の受賞にかがやき、国際的にも注目されている絵本作家、きくちちきが、特色印刷の描き分け版で美しい蝶の姿を描いた、思わず見惚れてしまう美しい絵本。
・【ご予約受付中(8月上旬頃入荷予定)】夜の木(第13刷) / シャーム、バーイー、ウルヴェーティ
2008年のボローニャ・ブックファアで絶賛され、ラガッツィ賞(ニューホライズン部門)に輝いたインドのTara Booksによる絵本The Night Life of Treesの日本語版。待望の13刷がリリース。まるで工芸品のような絵本です。
・【サイン本ご予約受付中!(7月末入荷予定)】而今而後 Time Unfolding Here / 岡崎乾二郎
絵画、彫刻のみならず、建築や環境文化圏計画、絵本、ロボット開発などの幅広い表現領域でも革新的な仕事を手がけ、さらには文化全般にわたる批評家としても活躍してきた岡崎乾二郎。本書は、東京都現代美術館で開催された同名の個展の公式展覧会図録。
RECOMMEND BOOK !
わたしたちは、わたしだけの「さみしさ」を持っているという状況を、誰かと分かち持つことができる。ひどくさみしいことだけが、さみしくないことを可能にするなんて、変な感じだ。満員電車に乗っているとき。カフェで作業をしているとき。あなたと座っているとき。隣のひとに話しかけてみようか。わたしたち、まるでみなしごみたいですね。
ロングセラー『水中の哲学者たち』で颯爽とデビューした在野の若手哲学者・永井玲衣の最新エッセイ集。早速店頭でもよく動いていて、再入荷しております。
最初の章は、コロナ禍の不安定な日常のなかでの小さな発見や輝き、不安や怒り、そして、「戦争がはじまった」日で終わる、曜日だけが記された日記。他、23編のエッセイが収録されています。
世界が送る未知のサイン、批評と哲学、哲学「させられている」私、見ることと聴くこと、誰かと考えるということ。
エッセイはもちろんのこと、1章の日付のない日記が面白かった。ひとつひとつは、まばたきのようなとても些細な記録。けれど、永井さんが、言葉や他者、哲学、そして世界とどのように対峙しているのかが、完成されたテキストよりも、ダイレクトに伝わってくる。ああ、こんなふうに、永井さんは日々を生きているんだな。そして一層、永井さんのことが好きになった。
「わたしはいつまでも驚いていたい。こわがっていたい。絶望して、希望を持ちたい。この世界から遊離せずに、それをしつづけたい。世界にはまだまだ奥行きがあるのだから。」
枝葉末節な日々
今週の担当:(杏)
7月4日(金) 建築家の光嶋裕介さん、デザイナーの坂本大祐さん、当店おなじみルチャ・リブロの青木真兵さんのトークイベント。今回は光嶋さんの新刊『建築のはじまり』の刊行記念イベントでもありつつ、坂本さんのプロジェッティスタ研修イタリア旅の報告会も兼ねている。ものをつくるということ、利他と利己、ヘルシーに仕事をしていくことなど、話はどんどん広がっていく。光嶋さんは、修業時代から17年間、世界のあちこちで建築を訪ねスケッチを描いている。その感覚を、坂本さんはブルーノ・ムナーリの言葉を借りて「ファンタジア」とよんだ。クリエイティビティは、ゼロからなにかを作るというよりも、与えられて満たされているところからこぼれ落ちているようなもの。素晴らしい建築を見たり、東吉野村の生活の中で満たされた感覚があると、クリエイティビティは自然に駆動していく。3人とも、話しながら普段言葉にしていなかった感覚に気付いていくような対話で、金言が飛び出しまくっている。私の個人的な感覚として、終了後にみんながなかなか帰らないイベントは、いいイベントという指標があるのだが、今夜もそうだった。ずっと会場の熱気がさめなかった。
7月5日(土) 朝、グラノーラ、島バナナ。「ある日、」の島バナナも、もう終わり。お客さんから新たな沖縄の情報を聞いたり、不思議だったことの答えを教えてもらったり。まだまだ沖縄の余韻のなかにいる。今日からノブセノブヨさんの展示がはじまった。2020年、ノブセさんは『ひらべったいわたしのはなし』というすてきな掌篇集をもってきてくれた。それ以来ずっと、新作を楽しみにしているし応援をしている作家。「いつか展示しませんか」と言ってから早や数年。何度もプランを持って来たりやめたり、ああだこうだとしているうち、最後はごくシンプルに、そしてとてもノブセさんらしい展示になった。ノブセさんは元々、筆先の細いペンで絵を描いていたので、自然と絵も小さく、細かくなる。大きな絵が描きたいと試行錯誤した末、スポイドを使って書いてみたところ、思うような線が描けるようになって一気に制作が進んだのだそう。太陽の子孫のような存在が植物に光をあたえたり、水をやったり、背中にみずうみをのせていたり。「どれも私の理想の姿です」とノブセさん。「晴れの日にお外で寝転がってるだけでこんなにもしあわせなのに、それだけで生きていけないのはどうしてなんだろう。」と、ステイトメントははじまる。ほんとにそう。ノブセさんの新しい挑戦が詰まっているので是非多くの人に見てほしい。夜、コアラドへ。「台湾屋台Woo」のPOP UP。ウーちゃんの台湾料理、本当にどれも美味しかった。特に、発酵トマト焼き餃子が強かった。
7月6日(日) 朝、グラノーラ。午前中に黒鳥社がやっているプログラム「blkswn lounge」の参加者さんたちが、12名で大人の修学旅行に来てくれた。前日「恵那川上屋」に行ってきたのだそう。車座になって、皆さんから投げかけてもらった質問にざっくばらんに答えていく。全国各地からこのために集まったメンバーは、市議会議員や学校の先生、行政マンなど仕事も年齢もさまざま。何を話したか全く覚えていないが、最後には拍手が起こった。夜、豚肉、もやし、小松菜炒め、薬味たっぷり納豆、キムチ、黒鳥社の土屋さんからいただいたちりめん山椒。
7月7日(月) 朝、ごはん、味噌汁、目玉焼き、玉子焼き、ちりめん山椒。編集委員を務めている「なごや文化情報」の仕事で、小説家の太田忠司さんにインタビューする。1990年にデビューして以来、35年間毎年本を刊行されている。それも複数冊。どうしたらそんなことができるんだろう、と不思議に思って聞いてみると、「とにかく毎日机に座る。なんにも書けないな、という時もとにかく一文字でも書く」とのこと。積み重ねって偉大だ。夜、トドで進行中のプロジェクトのミーティング。映像担当のSさんは現在、奥三河の花祭のドキュメンタリー映画を制作中なのだとか。花祭、いつか行ってみたいと思っているお祭りなので大興奮。初回のミーティングの時も、Sさんがネタとして持ってきた映画や本がどれもこれも「そうそう!」というものばかりだったので大興奮したのだった。走り出すまでがなかなか大変そうな今プロジェクトだが、実働メンバーが楽しいので楽しくやれそう。
7月8日(火) ゆるゆる起きて、そば。ネギ、みょうが、大葉を刻んでたっぷりのせて、納豆とキムチ、ちりめん山椒もオン。今日は期日前投票へ行く。悩んだ末、共産党に投票した。生活が苦しいことは特定の誰かのせいじゃない。これまでの政治のせい。なぜ今、排斥主義にこんなに注目が集まっているのか不思議で仕方がない。元国連のアダマ・ディエンさんによる「ヘイトクライムはヘイトスピーチからはじまる」という動画を見る。差別がはびこる世界を、人権のない世界を、本当に望んでいる人がいるのだろうか。自分だっていつか老いる。やさしい世界のほうがいいに決まっているのに。スーパーに買い物にいって、インスタでみかけて作ってみたかった無水カレーを作ろうと思ったのだが、トマト大6個、の時点で(高い…)とひるんで、レシピの半量でつくることに。トマト、なす、えのき茸、カレー粉を煮るだけで、野菜の水分でカレーができる。ところがこの「カレー粉」は、パウダーのカレールーのことだった。カレー粉だけでは、出汁がなく味がしない。カレー粉でやってる人いないかなと検索したら、大量の失敗談にあたった。あきらめて、家に残っていたカレールウを大人しく投入。まあまあ美味しくできた。沖縄でもらったもずくを、塩抜きしてきゅうり、みょうがと和える。よっさんは、沖縄でCAFUNEに行って以来、アイスクリームを自作したいといっている。こちらもインスタで見た、ギリシャヨーグルトと生クリームときび砂糖をまぜて冷凍庫で固めるだけの簡単レシピ。杏仁霜も混ぜて杏仁アイスにする。できあがりが楽しみ。
7月9日(水) 今日は臨時休業をいただき、一日TEMPORAの打ち合わせ。TEMPORAでは店の一部でたまに飲食のPOPUPイベント行う予定である。内装にも関わっているTくんがコーディネートをしてくれているのでTくんと共にお薦めの店へ行く。快くお引き受けいただく。午後からは現地で内装の打ち合わせ。素材ありきの内装で結構難しいケースだと思うけど、とっても素敵になりそう。家に帰ってネットワークの打ち合わせ。こちらも着々と進んでいく。一日中打ち合わせでさすがにへとへと。ミーティングが終わってから昨日仕込んだ杏仁アイスを桃とあわせて食べる。「生クリームどこにいったんだろ」とよっさん。たしかにほんのり甘いギリシアヨーグルトそのまま。さっぱりしておいしいけど、アイスクリームぽくはない。マ・ドンソク出演『ソウルメイト』を鑑賞。2019年のマ・ドンソク、まだけっこう細い。
7月10日(木) 朝、グラノーラ、バナナ入り。午前中に進行中のプロジェクトのミーティング。残りのカレーを食べて出勤。奈良で新たに本と手芸のお店を開店準備中の方がご来店。港まち手芸部の活動を知って、はるばる参加しに名古屋へ来たのだそう。『Knitting'n stiching Archives.』も港でご購入くださっていた。お祖父さんはバリバリの右翼で、本棚には安倍元首相の写真集があったり定期購読していたHanadaが亡くなられたあとにも家に届き続けていたり…。そんなとき、大和郡山のとほんさんに行って、本や本屋の多様さに出会い直したのだそう。「もしあのとき、とほんさんに行ってなければ、私は本の面白さを知らなかったかもしれないです」。その後、あちこちの書店をまわって、自身でも地元に「場」をつくりたいと思うように至ったのだとか。開店予定のお店では、手芸の会もされる予定で、あすかちゃんの手芸部の取り組みは本当にすごい、と話してくれた。私もそう思う。今日も今日とて、幅広い年齢層でにぎわう手芸部では選挙の話でもちきり。あすかちゃんは年配の参加者と一緒に、政党のマッチングチェックをしていたそう。同性婚の話題になったとき年配の参加者が拒否反応を示した。その時あすかちゃんは「わかった、この話はまた今度しよう」と言ったのだという。「また今度」がある関係を作っていること、その信頼感を持っていること、対話をやめないこと、あすかちゃんが手芸部の活動や、自身のアーティスト活動の中で続けていることはまさにこれだと思う。閉店後、TEMPORAで働いてもらう予定のHさんと面談という名のおしゃべり。私のソウルメイト、野田ちゃんの紹介なので、間違いないとは思っていたが一瞬で打ち解けることができた。帰り際、Hさんが持っていたトートをみて「あ、Kankyo recordのトートですね」と言うと、実は何年も前、Hさんが大学生だったころ、私にレジ対応の際「あ、Waltzのトートですね」と声をかけられたことがあったんですよ、と話してくれた。とっても感じのよい子がWaltzのトートを持ってたのでつい話しかけちゃったのだ。なんと、Waltzさん(と、心の中で呼んでた)だったとは。夜、ささみが今日までなのでささみを食べる。けれど米を炊くとごはんが遅くなっちゃうし、冷やし中華にしよう、となった。ささみをゆでて、オクラをゆでて、ゆで卵つくって…。なんだかんだ、手間だった。さらに、ささみの大葉チーズフライをどうしても食べたくて作る。最後の仕上げに、冷やし中華のスープをかける段階で、やらかしてテーブルがびしゃびしゃに。私のささみフライもびしゃびしゃ。よっさんに「ささみフライどう」ときくと「さっくりしておいしいよ」とのこと。
EXHIBITION INFORMATION

【EXHIBITION】2025年7月5日(土)~7月21日(月) ON READING店内
NOBUSE NOBUYO exhibition 『光合成の練習』
愛知在住のイラストレーターで文筆家の、ノブセノブヨによる展覧会を開催中です。

【EXHIBITION】2025年7月11日(金)~7月14日(月) ON READING GALLERY
vent de moe 2025 summer exhibition 扇子・小物展示販売会
花は忘れる、風は覚えている。Flowers Forget. Wind Remembers.
従来の枠にとらわれない自由でコンテンポラリーな扇子ブランド、vent de moeの展示即売会がスタートしました。 涼やかに揺れる扇子、風と記憶を丸ごと纏うようなスカーフやハンカチたち。そして〈Sweet Little Nothing〉のグラフィカルなTシャツやバッグも並びました。夏のはじまりの一日、あなたの記憶に残る風を探しに、ぜひお立ち寄りください。

【EXHIBITION】2025年7月17日(木)~7月28日(月) ON READING GALLERY
mocchi mocchi & 望月佐知子
HANGA – silkscreen × papermaking -EXHIBITION
京都にある版画工房 Printmaking studio PRESS CLUBをアトリエとして活動する、mocchi mocchi(シルクスクリーン版画)、望月佐知子(紙造形版画)の2作家による作品展です。

【EXHIBITION】2025年8月6日(水)~8月18日(月) ON READING GALLERY
福森翔一 写真展『遥か街を切る』
※作家在廊予定:土日祝
アイスランド旅、50日間の全記録。全編フィルムにて撮り下ろした作品となります。誰も知らないアイスランドではないけれど、誰も切り取ることのなかった遥か街の日常。
♪ Now Listening
ひねくれているのにどこまでもピュア。いじわるなインテリジェンスと人懐っこいメロディーが同居するフリーキーなポップバンド、ジョンのサンによる4部作の2作目がついに発売。歌、朗読、ラップ、バイオリン、ギター、トロンボーン、シンセサイザー、チェロ、クラリネット、サックス、リズムボックスが、内省的でいて、不思議で穏やかな調和を魅せる、詩情あふれるやさしい音楽。
今週はこのあたりで。
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