NEWSLETTER FROM ON READING 2025.10.17

名古屋のbookshop & gallery ON READINGから、週に一度のニュースレターをお届けします。
ON READING 2025.10.17
誰でも

こんにちは、ON READINGの黒田義隆(義)と黒田杏子(杏)です。週に一度のと、うたっておきながら、先週はいよいよ配信できませんでした。体力、時間の限界でした。心配してくださった方、ありがとうございます。なんとか生きながらえております。(義)

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NEWS

絶賛営業中!

国際芸術祭「あいち2025」が開催される2025年9月13日~11月30日の期間中、愛知芸術文化センターB2にて、ON READINGが期間限定のミュージアムショップ『TEMPORA(テンポラ)』をオープンします。

様々なプレーヤーと協働しながら、アートブック、書籍(新刊・古書)を中心に、スーベニアとなるようなオリジナルアイテム、地元ゆかりのクリエイターたちによるプロダクトやグッズ等も販売するほか、ギャラリースペースを設け、展示企画やポップアップも開催し、ミュージアムショップの新たな可能性を提示していきます。芸術祭もぜひ、観に行ってくださいね!今回、かなり興味深い展覧会になってますよ!

Instagramのアカウントで随時、情報発信していきますのでぜひフォローお願いします!https://www.instagram.com/tempora2025/

2025年9月13日~11月30日
愛知県芸術文化センター地下二階
営業時間:10:00~18:00(金曜日は~20:00)
月曜定休(祝日の場合は営業、翌日休)
地下鉄栄駅・オアシス21から直結  

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入荷情報 PICK UP

青葉市子 十五周年 ICHIKO AOBA 15th Anniversary Book
国内外で高い人気を誇るシンガーソングライター、青葉市子の活動15周年を記念して制作された、2025年1月に京都と東京で開催されたコンサートの密着ドキュメント。舞台裏や各公演のレポート、公演直後のインタビューまでを取材し、写真家・野田祐一郎による撮りおろし写真も多数掲載した一冊。 

緑をみる人 / 村田あやこ
名もなき緑を日々見守る、世界13カ国18人の“隙間植物愛好家”たちが採集した写真と、インタビューを収録した一冊。それぞれのストーリーと総数800枚もの写真をとおしてみえてくるのは、日常にひそむ地球の「野生」だ。

[増補版]イメージと正体の調査報告 / 村上慧
現代アートのアーティスト・村上慧による、実際に食べたものとパッケージやメニューに写る写真を比較したプロジェクトをまとめた作品集。初版が即完し、12,000字のテキスト「『食べたいもの』がわからない」を加えた増補版として再リリース!

つぎの民話:〈映像以前の光〉への旅 / 松井 至
傑作ドキュメンタリー映画『私だけ聴こえる』で知られざる〈コーダ= CODA〉の世界を描き、驚きと共に世界に迎えられた松井至監督による、初めての著書。石巻、いわき、奈良、京都、朝日町、西会津、前橋……、日本各地を旅し、人に出会い、撮影を続ける日々の中で、〈映像とは何か〉〈映像に何ができるのか〉を探究し続けた、二年間の旅を綴る、体験的映像論。

山學ノオト6(二〇二四)/ 青木真兵、青木海青子
人口1500人の奈良県東吉野村にて、自宅を開放した「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」を開設、リトルプレス「ルッチャ」を発行し、ネットラジオ「オムライスラヂオ」での配信も続ける青木真兵、海青子夫妻による、2024年の日記&エッセイ集。「声が発されることは弱さではなく、生きる術なのだ。」  

BIRDS / 吉楽洋平
写真家、吉楽洋平による名作が、久しぶりの再入荷です!野鳥図鑑から飛び立った鳥たちを、木々の中で撮影したウィットに富んだ作品集。素晴らしいアイデア。

YUASA KEIKO 湯浅景子 2026年 カレンダー
塗り重ねた色の上に針で引っ掻くようにして絵を描き、独特のマチエールを持った作品をつくり出す画家、湯浅景子による、2026年のカレンダー。12点の作品を掲載。折りたたむことによって、ひと月ずつ飾ることができる仕様です。  

DAILY CALENDAR 2026 / palmehuset
デンマークの200年の歴史を持つ美しいガラス温室の名が由来となるクリエイティブ・ユニット「palmehuset(パルメフセット)」による日めくりカレンダー。手のひらに収まる小さな日めくりカレンダーです。新月と満月の表記があります。365日毎日変わる絵をお楽しみください。

2026 Calendar / published by collé
アートディレクター/グラフィックデザイナーの山口崇多によるデザインスタジオ「collé」が手がけるプロダクトブランド『published by collé』の壁掛けタイプのカレンダー。2026年1月から12月まで、毎月違うユニークなグラフィックが楽しめます。  

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RECOMMEND BOOK !

イメージと正体の調査活動は、食事という営みを、目的と手段の円環に閉じ込めないための抵抗である。それはレストランのテーブルで、コンビニの棚で、ときにはインターネット上で小さく繰り広げられる、孤独な戦いだ。苦しまぎれの負け戦かもしれないが、誰かがやらなければならない。
村上慧『イメージと正体の調査報告』(盆地Edition)より

昨年刊行された初版がON READINGでも大ヒット&即完!待望の増補版がリリースです◎

アーティスト・村上慧による、実際に食べたものとパッケージやメニューに写る写真を比較したプロジェクトをまとめた作品集。

著者による12,000字のテキスト「『食べたいもの』がわからない」が追加収録されています。(めっちゃ面白い…)

食事の時、我々は、食べているものそれ自体ではなく、メニューやパッケージに写っているイメージを食べているのではないかーー。

そのような仮説をもとに、村上は自ら「イメージと正体の調査員」となり、メニュー画像やパッケージの写真(イメージ)と実際に食べたもの(正体)を6年間に渡り撮影し続けてきた。

本書にはそうして集められた「イメージ」と「正体」、457組が見開きに並べられている。

最初は「わ~、これ出てきたらがっかりだろうな」とか「メニュー写真の解像度が低いパターンね」とか、日常のあるあるとして楽しくみていたのだけど、そのうち不思議な気分になってきた。なにが食べたいという欲を呼び起こすのか、選ぶという行為のなかにあるもの、実際に自分が食べる「それ」を、じっくり見ているのだろうか…?

膨大なイメージがあふれ、すべてが広告になってしまった現代、私たちは選択と決断の連続にすっかり疲弊してしまっている。

本書で、そして日常で、「イメージ」と「正体」の差異に目を凝らすことは、この状況に抗って「ちゃんと消費者になる」ためのエクササイズであり、まぎれもない芸術の実践である。

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枝葉末節な日々

2週間分を一気に。。。

先週の担当:(義)

10/3(金)  朝方、はっちゃんが脇にすっぽり収まって寝てくる。起きれんよ。ここ最近、さくちゃんのトイレ失敗が多い。今、使っている猫砂が嫌なのか。困った。ちょっと変えてみようかな。9時に出発したいところ、9時半に出発しTEMPORAに向かう。昨日、先方の手配ミスで誤ってON READINGに届いてしまったTEMPORAのトートバッグの追加生産分を運び込む。頼むよ、まじで。オアシス21のカフェドクリエでモーニング。う~ん、サンドイッチが期待していたものではなかった。まぁこんなもんなんだろうけど。東山珈琲館の美味しいミックスサンドが食べたくなった。久しく行ってないな~。杏子はTEMPORAに残って仕事。自分はON READINGに出勤。ここのところ、ON READINGはゆったり。というかゆったり過ぎる。もう少しお客さんに来てもらわないとまずい。いい本たくさん入荷してるし、みすず書房フェアもスタートしている。「みすず書房フェア」は、昨年からじっくり準備してきた「独立書店ネットワーク」のお披露目イベントのような一面もある。この忙しい中、頑張ってデザインした冊子「わたしのみすず書房」も手に取ってもらえたら嬉しい。軽やかなデザインができて個人的にも気に入っている。昨日、在庫の整理をしていたら掘り出されたDOROTHYの在庫。。。完売してちょっと寂しく思っていたので嬉しいっちゃ嬉しいのだが。カラーページの貼りこみ作業をゆいちゃんにお願いしてやってもらう。貴重な残り40冊。欲しがっていた方たちに届きますように。日中はひたすら、nakabanさんの作品集のための色補正作業。今回、およそ120点ほど作品を描いていただいた。そのどれもが素晴らしすぎて作業にも力が入る。今回は、八紘美術さんに印刷をお願いしたのだが、見積りやスケジュールも融通をきかせてくれて何とか収まりそうな雰囲気に。一時は胃がやられるくらいヒリヒリしたが、とりあえず首の皮一枚つながった感じ。今日一日ゆいちゃんがハイスピードでいろんな仕事を片付けてくれたおかげでだいぶ助かった。まじでありがたい。。。

10/4(土) 昨夜もリビングではっちゃんを撫でながらウトウトしてしまった。3時ごろにベッドに猫とともになだれ込む。朝、バタバタと出発。TEMPORAで軽く品出しなどして、本山でおにぎり買ってON READINGに出勤。今日、明日と大町さんの在廊日だが、天気がぐずついていていまいちな客足。とはいえ、写真集が3冊売れたりと悪くない結果。(いや、もっともっと売れてほしいのだが。)今回の展示、内容も素晴らしく来てくれた人はそれぞれ感じ入ってくれて、評判もよいのだが、なかなか写真集の購買に届かないのが歯がゆい。確かに7,700円と、写真集とかアートブックとか普段買わない人にとっては安くないのかもしれないが、ページ数やモノとしての完成度や魅力からすれば、そんなに高くはないと思うのだけど。写真集売るのって本当に難しい。大町さんは自身もよく写真集を買う方なのだけど、写真やってても写真集ほとんど買わないって人も多いもんな~。何だろな~。音楽やっててCDやレコード買ったことないって人はあんまり聞いたことがないのに。その感覚があんまりわかんない。撮ることと、観ることのあいだになぜそんなに距離があるのか。ずっと考え続けている。

10/5(日) 今日はTEMPORAでKISO×BorkeのPOPUPということで、朝9時にTEMPORAへ。超人気店のパン屋KISOによるスペシャルなクグロフと、Borkeさんの素敵なお花のペアリング・セットの販売とあって、やばい、並びすぎたらどうしよう、と整理券配布にしたのだが、告知をセーブしすぎたのか完売せず、少し余らせてしまうという結果に。完全にこちらのオペレーションの失策で大変申し訳ない気持ち。本日、今村文さんの展示の最終日。で、ようやく作品も売れてほっとする。文さんは数年前にイギリスのギャラリーで展示したのを機に海外で一気に人気が高まり、日本でも所属ギャラリーが決まって、前回、ON READINGでやったときよりも、ぐぐぐっとプライスは上がっている。といっても前回までは安すぎたので、ようやく適正なプライスになった、という感じだけど。とはいえ、なかなか気軽にパッと手を出せる価格帯ではないので、購入してもらえて本当に嬉しい。営業後、文さん、平出くん、モモちゃんが来て、展示の搬出。文さんもクグロフを楽しみにしていたみたいで、プレゼントしたらめちゃくちゃ喜んでくれた。展示壁面をパテ埋めして、ペンキを塗って、ON READINGへ。大町さんの展示も最終日で、ちょうど搬出が終わったところ。大町さんを見送って、長い一日が終わった。さすがに疲れた~。。。

10/6(月) 朝、トースト。写真家の濱田英明さんが昨日noteに書いていた、一年前に亡くなった大林さんについてのテキストを読んで、杏子が動揺するくらい朝からめちゃくちゃ泣いてしまった。大林さんと濱田さんが仲良くじゃれあってた姿を時々思い出す。もういないんだな。ON READINGはゆいちゃんにお任せして、今日はTEMPORAで、HOME ECONOMICS EXPERIMENTの展示の搬入。Shonくんと、以前、ON READINGのお隣に住んでいたソウタロウくんも手伝いに来てくれた。HEEは、Shonくんとmayumiさんによるアート・ユニットで、廃材や余剰在庫にユニークなクリエイティビティを付与したアイテムを制作している。そういうアップサイクル的な文脈も、TEMPORAにぴったりだし、国際芸術祭の文脈でHEEを紹介したいという思いもあってお声がけさせてもらったのだ。ここ数年で一気に引っ張りだこなクリエーターになって、超忙しいだろうに引き受けてくれて本当にありがたい。搬入も手慣れたもので、夕方には無事完了。昨夜、オンラインショップにあげた西淑さんのカレンダーが一瞬で売り切れた。100部入れて30部くらいは店頭分用にとっておいたのだが、オンラインに載せた70部があっという間に。ゆいちゃんに出荷準備をせっせと進めてもらう。早速問い合わせも来ている。たぶん、もうちょっと再入荷できるとは思うけど、大量の梱包は結構しんどいので、できるだけ店頭で販売していくことにする。来店もしてほしいし。夜はスーパー銭湯にいって、お得な海鮮丼ぶりセット。

10/7(火) ON READINGは定休日。TEMPORAでHEEの初日。早速、お目当てのお客さんが来てくれて1点もののチェアやライトを買ってくれた。幸先のよいスタート。レジ対応や梱包などのオペレーションを確認して、半澤さんにマニュアル化してもらう。スタッフみんなも仕事に慣れてきて頼もしい限り。

10/8(水) 朝、TEMPORAへ。今日はKAMUのお弁当の販売日なので準備だけ手伝いに。前回よりもお弁当の数を増やしたものの、予約がいっぱい入っていてまたしても早々に売り切れ。人気や。今日は本当は大阪に行く予定だったけど、自分も杏子も体力の限界が来ていて、無理してぶっ倒れたらおしまいなので、家でゆっくりすることにする。ひさ~しぶりに猫を傍らに昼寝。至福の時。

今週の担当:(杏)

10/10(金) 昨日、一昨日とON READINGを臨時休業にさせてもらった。待望の完全休日は来週なのだが、今週末いろいろとイベントが立て込んでいることもあって、ここいらで休んでくださいよ~~と身体からサインが出ているのを感じていた。水曜は休んで、木曜はあいち2025の瀬戸会場を観に行った。陶磁美術館がとってもよくて、歩いているだけでいい気持ちで、心まるごとリフレッシュ。名古屋に戻ってきてON READINGで溜まった荷物を作ったりして日付変わっちゃったけど、リフレッシュ気分は変わらない。休むってすごい。そして今日は、ON READINGはよっさんに任せてTEMPORAへ。昨日、初めてTEMPORAに行かなかった。毎日、どちらかは行くようにしているのでちょっとソワソワしたけれど、スタッフの皆が首尾よくやってくれているので、こうしてお任せできるようになった。本当に頼もしい。夕方、よっさんから「どうしても書けない。今日はニュースレターお休みにしていい?」と連絡が入る。毎週、冗談ぽく言っているけど今日はどうも違うようなので、「そうしよう」と言う。ニュースレターを始めて1年半、初めて配信できなかった。

10/11(土) 三連休初日。朝、食パンにマスタードとマヨネーズをぬって、ハムをオン。開館と同時の朝10時から『ありふれたくじら』刊行記念トークを、ラーニングセンターへたちで開催する。是恒さんのこれまでの活動について、鯨という動物をとりまくイメージの変遷や、捕鯨の是非をめぐる議論、東海地方にまつわる鯨の話、あいち2025で観られる鯨についてなど。機材トラブルもあったが熱心に聞いて下さるお客さんも多く、質疑応答も含めてみっちり2時間があっという間だった。是恒さんの作品はもちろん、芸術祭の他の作品の見方も変わるような素晴らしいトークだった。『ありふれたくじら』、改めてめちゃくちゃいい本だなと思う。このタイミングで刊行できて本当によかった。その後、是恒さんと石倉さんとランチ。芸文センター9階にある「る・るぽ」に初めて入る。8階と10階の「あいま」にある小さな喫茶店で、地下2階の「セルフカフェ」といい、雰囲気が最高。石倉さんが「徹子の部屋みたいですね」という。是恒さんと石倉さんが、今回、TEMPORAがあることが「ラッキーだった」と言ってくれてめちゃくちゃ嬉しい。こちらこそ、ラッキーだった。春にラーニングのイベントに行って、石倉さんのお話をお伺いして、TEMPORAの選書はその時に得た感覚がベースになっている。だから石倉さんありき、ラーニングありきのTEMPORAなのだ。夕方は昨日に引き続きオル太の物販。始まる前にキュレーターの中村さん、コーディネーターの林さんとおしゃべり。アーティストを信じ、アートの力を信じ、戦っている中村さんの姿に感動した。こうやっていろんなひとと、パレスチナのこと沖縄のこと、芸術祭と政治のことなどなど、いろんな話ができたらいい。私は知らないことばかり。

10/12(日) 朝、コンビニでアサイードリンク、サンドイッチ。「まちの記憶を呼び起こすin中区」ワークショップ当日。永井玲衣さん、磯崎未菜さんと共に「思い出すためのレッスン」を開催した。このプロジェクトは”中区にまつわる記憶をあつめたエッセイ集をつくる”というものだけど、原稿を公募して選考するのではなく、ワークショップ受講+エッセイ執筆というプロジェクトへの参加者を募集する、という不思議な建付けの企画にしたので、実際「何をするのかわからずにきた」とおっしゃる方も多数だったよう。何かになってまちを眺めてみたり、「さみしい」という言葉を起点に対話をしたり、参加者同士で聞き書きをしたり。本当に、よ~く歩き、よ~く見て、よ~く話し、よ~く聞き、よ~く書いた一日だった。皆よく頑張った…。涙もあり、笑いも起こり、書ききれないほど、本当にいろんなことがあった。長いけれど短い一日のあいだに、いくつもの人生をみて、私の知らない街の姿をみた。本当にたくさんのものをもらった。永井さんと磯崎さんは、声からしてもう、違った。ことばやふるまい、安心して話ができるためのささやかな場づくりの工夫が、ずっとずっと、素晴らしかった。昼はコンパルのポークサンドイッチ、夜はKAMUのお弁当。胸がいっぱい。

10/13(月) 今日は、永井さん・磯崎さんの中区おもてなしツアー。まずは栄のコメダでモーニング。予定していた純喫茶はどこも祝日休み…。コメダさん営業してくれてありがとう。昨日、2班に別れて対話やワークショップをした際、おふたりはそれぞれのグループに入ってくれたのだが、その進め方の違いも面白くて、どんなすり合わせがあったのか? 日頃どうされているのか? などどんどこ質問してしまう。磯崎さんはNOOKで東北の人びとと関わっておられるので、「日常とは違う場をそこに立ち上がらせる哲学対話は都会ならではの方法、山村では既にそこにある場に自分が入っていくということしかできない」という言葉にハッとする。というか、お二人の言葉にはハッとしてばかり。アートラボあいちの1階にある「愛知・名古屋 戦争に関する資料館」へ。広くはないけれど、工夫された展示に、皆、夢中になる。特集展示は「子どもたちの『戦闘配置』~子どもたちの眼から見た学童疎開~」。疎開のことを、戦闘配置と呼んだ、ということも初めて知った。名古屋からは、愛知、岐阜や長野へ疎開が行われた。1945年1月13日、三河地震が起こる。2000人近い方が亡くなってしまい、そのなかには疎開で来ていた生徒たちもいたという。恥ずかしながら三河地震のことを何も知らなかった。終戦の年に、そんなに大きな地震が起きていたとは。学芸員さんによると、戦況が悪かったこともあり、新聞などのメディアではほとんど報じられていなかったそう。1943年の鳥取地震ではむしろ、復興の様子を盛んに報道していたようで、その2年間の変化を感じる。皆で「戦争中だって、地震はもちろん起きてるよね。なぜ、ないって思いこんでいたんだろう」と話す。伏見の一富士でひつまぶし。憧れの白焼きを皆でシェアして食べる。外はかりっと中はふわふわで、ウナギってこんな味なのか…。磯崎さんとはここでお別れ。初めましてだったけれど、そのお人柄に、すっかり大好きになってしまった。また何かご一緒しましょう!と言い合って別れる。永井さんと私たちは名古屋城へ。土曜に開幕した「アートサイト名古屋城」をプロデューサー・野田ちゃんの案内で見てまわる。昨年、私たちは、歌人の千種創一さんとタッグを組んで二之丸庭園で展示をした。今年は、乃木倉庫がある御深井丸の周辺が会場。本丸御殿を1分の1のスケールで写し取ったという大型インスタレーション。フレスコ画の技法を用いて独自の解釈で描かれた障壁画が、風をふくんではためいている。やわらかく曖昧に揺れる境界。日本の家屋は壁ではなくふすまや障子によって仕切られているが、そうやって境界が可変である場所にいることは、壁と扉で仕切られた空間にいるのとは大分違うよな、と思う。久しぶりのAちゃんと愛犬Mに会えた嬉しい偶然もあって、心の中まで風がすうっと通っていくような気持ちのよい展示だった。乃木倉庫の脇には静かな池があって、そこは鳥たちの楽園。金木犀が香るなか、カラスたちが水浴びをしている。名古屋城のカラスはどこかのんびりしていて、猫みたいにひっくり返ったりつつき合ったりしてじゃれあっている。昨年、アートサイト名古屋城に参加したことで、名古屋城という場所にお気に入りのスポットがいくつもできた。観光地でも史跡でもない、そこに暮らすものたちにとっての場所。昨年、狩野哲郎さんが鳥のための彫刻を展示していたバナナの木もそのひとつ。いそいそとバナナに会いにいくが、当たり前だがそこに狩野さんの作品の痕跡はなく、さみしい、と思う。きっと、鳥たちもそう思ってるんじゃないかな。

10/14(火) ON READINGも定休日、TEMPORAも連休の振替で定休日、の正真正銘の休日!なのだが、連休中にできていない仕事がたまってしまっているので昼すぎからON READINGへ。久しぶりに東山珈琲館へ。私はいつもの、じゃこピラフ、よっさんはいつもの、ミックスサンド。「いつも通り」の店であり続けるためにはどんな細やかな努力があるのだろう。ワークショップを経たからか、大きな山場をひとつ超えたからか、今「いつもの店」を思うようにやれていない反省からか、いつもに増して東山珈琲館の優しさが染みた。溜まった通販や、卸の荷物をどんどこ作っていく。よっさんは、nakabanさんの作品集の作業が大詰め。結局深夜に帰宅。

10/15(水) 今日はON READINGを臨時休業にしていた。本当はアートサイト名古屋城に行くためにとっていた休みだったけど、月曜に最高のコンディションで観に行けたし、それなら大阪に、と思っていたのだけど昨日、よっさんに「無理」と言われてしまった。もちろんひとりで行けばいいのだが、電車やらなにやら下調べの時間もなく、まあ仕事は私も確かに溜まっているので、ゆっくり仕事をしたり家事をしたりする、という素敵な休日にする。昼ごろ、ON READINGからTEMPORAに荷物だけ運んで、よっさんはON READINGに戻ってnakabanさんの作品集の作業。私はTEMPORAに残ってあれやこれや。スリップをチェックしたり、レイアウト変更をしたり、棚をメンテしたりと、やることは無限に湧いてくる。TEMPORAに出勤していたゆいちゃんを誘って、オル太の展示を観に行く。ゲーム形式と聞いていたので、ひとりはすこし心細かったのだ。演劇の舞台の中に足を踏み入れて4種類のゲームをするという仕様。演劇もゲームセンターがモチーフになっていた。花の蜜をあつめるゲーム、革命者たちの声をきくゲーム、蜜をうつわに入れていくゲーム、ビー・ヒューマン?を製造するゲーム。動作としてはゲーセンでやるゲームに近く、それなりに夢中に楽しくやってしまうのだが、働き蜂=労働者を製造するゲームって、何をやってるんだこれ…と我に返った。他はまったくダメダメだったが、最後のゲームで私とゆいちゃんはS+を取得。意味を問うことなく目の前の作業に夢中になっているうちに「私たち、虫になってしまう」。演劇の言葉が響いてくる。なんだかんだ閉店近くまでいてそのまま帰宅。洗濯、掃除、夕飯づくりなどをちょろちょろしているだけで一日が終わる。夜、鶏肉の炊き込みご飯、わかめとえのき茸の味噌汁、茄子の生姜ポン酢いため、沖縄のある日、から届いたもずくでもずく酢。

10/16(木) 朝、炊き込みご飯、もずくの味噌汁。午前、昨日忘れたものをとりに私だけTEMPORAへ。ON READINGへ戻って、今日はひたすらインスタ投稿用のテキストを書きまくる。TEMPORAは細やかな投稿がまだ全然できていない。あれこれと本の紹介をしたいのだが、どうしてもイベントごとの告知が先行してしまって、追いつかない。ちょうど発売になった村上慧さんの『イメージと正体の調査報告』を、ON READING用とTEMPORA用に別の紹介文を書いた。同じ本でもON READINGの文脈とTEMPORAの文脈は違うので、書き分けて紹介したい。ON READINGにとっては、初版がうちでヒットした本の増補版(おめでたい)だし、TEMPORAでは、あいち2025のラーニング・チームの一員である村上さんの著作である。そうして、日常を十全にあじわうための力を取り戻すための抵抗の書としてどちらの店でも手渡していきたい。単なる自己満足ではあるが、他ならぬ自分を満足させることには執着していたい。しかし時間はあっという間にすぎていく。あとひと月半でどれくらいやれるだろうか。閉店後、ガストで粗挽きハンバーグセット。店に戻って残業をしていると、結局今日も23時。

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EXHIBITION INFORMATION

加藤 崇亮 個展 『BOX OF SOMEONE』
2025年10月23日(木)~ 11月3日(月)
※10月30日(木)は17時閉廊
※初日作家在廊予定

誰かの名を持つ小さな箱。
今回はマッチボックスに描かれたドローイングなどのシリーズを展示します。マッチボックスという既存の形式を利用して、そこにドローイングを施すことで、匿名のものに潜む物語を提示します。

加藤崇亮
1985年東京生まれ。幼少期をドイツ・デュッセルドルフで過ごす。麻布学園、多摩美術大学造形表現学部デザイン科卒業。2012年よりエンライトメントに参加、2020年よりチカビに参加し、独立。映像的絵画を目指し、時間・映写・記憶をテーマにした絵画を制作している。https://www.instagram.com/tka_ki/

福士遥 個展『みちて、ひいて』
2025年11月15日(土) ~ 11月29日(土)
※初日は作家も在廊し、菓子屋おむすびによる菓子の販売も予定しております。

光と闇、喜びと悲しみ、夢と現実。相反するものたちのなかを行き来しながら、繰り返される日々。その大きな流れの中で、バランスを取ろうと漂う自分。色や形の明るさの奥に潜む小さな影や、滲む稜線の中に浮かぶ遠い記憶を感じていただけたら嬉しいです。

福士 遥 / FUKUSHI HARUKA
主にパート・ド・ヴェールという技法を使い、ガラス素材を電気炉で成形して作品づくりをしています。ガラスの粒が溶ける時に空気を抱き込んでできる質感は、やわらかく、独特の光をたたえていて、その様子は、曖昧だけど親しい、記憶のなかの光景とよく似ていると思います。 フォルムの中に絵を描くような意識で、くらしや壁面をいろどる作品の制作を行っています。https://www.fukushiharuka.com/
https://www.instagram.com/fukushiharuka/

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♪ Now Listening

Something to Write Home / The Get Up Kids

なんとか自分を奮い立たせようと、最近、懐かしいのばっかり聴いている。これも、もう25年以上前か。くらくらする。しかしやっぱりめちゃくちゃ名曲だ。切なすぎていろいろ思い出して泣けてくる。

今週はこのあたりで。

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