NEWSLETTER FROM ON READING 2024.08.16
こんにちは。ON READINGの黒田義隆(義)と黒田杏子(杏)です。
皆さまどうですか、踊ってますか?私は墓参りついでに、郡上の徹夜踊りに2時間だけ行けました。まちに響く下駄の音。これがなくては私の夏は始まらない(終わらない)。本命の白鳥踊りには行けていないのですが、ひとまずよし、とします。台風が近づいてきています。どうぞご無事でお過ごしください。(杏)
入荷情報 PICK UP
・ヘルシンキ 生活の練習はつづく / 朴沙羅
「多様なのが普通」って、こういうことなのか。ふたりの子どもと北欧へ渡った社会学者による、現地レポート。「考え方が変わる」と大反響の『ヘルシンキ 生活の練習』の待望の続編!
・がっこうはじごく / 堀静香
学校がきらいな子どもと、学校がきらいだった大人のために。執筆業の傍ら、非常勤講師として教壇に立つ堀静香によるエッセイ集。
・Solitude Standing / 小島一郎 Ichiro Kojima
青森市に生まれ、昭和30年代の津軽や下北を歩き、郷土に生きる人々への深い共感を印象的なモノクロームの世界に焼きつけた写真家・小島一郎(1924-1964)による写真集。
・SWISS / 長島有里枝(3rd edition)
デビュー以来常に「家族」というテーマのもとに写真を撮影してきたアーティスト・長島有里枝による不朽の名作が待望の再リリース。今は亡き祖母とお互いの花の写真を通して向き合い、遠いひとに思いを馳せ、近いはずのひとと心を見つめ合った時間が凝縮された美しい一冊。
・Calendar 2025 | Every day is a new day / Karel Martens
ヨーロッパを代表するグラフィックデザイナー、タイポグラファーであり、アーティストの一人である、カレル・マルテンスによる日めくりカレンダー。
RECOMMEND BOOK !
少女たちは、少女たちが公演をしたヴィクトリア劇場にほど近い場所で、少女たちが眺めたかもしれない海岸で、少女たちが歩いたかもしれない路で、わたしたちの兵隊が、男を、女を、子どもを、殺していることを、まだ知らない。フォート・カニング近くのチャンギ海岸で、アンバー・ロード近くの海岸で、タンジョン・パガーで。
戦争末期、東京宝塚劇場に集められ風船爆弾を作らされた女学生たちの物語を、知っていますか?私は、知りませんでした。戦後、関係者が口をつぐんでいたため、その事実は長く知られることがなかったのだそう。
本書は、小説、マンガ、エッセイ、絵本など多様な表現手法で作品を発表している小林エリカが、膨大な資料や取材を基に描いた意欲的長篇小説。
実際の出来事をフィクションにする際、たくさんの「わたし」から架空の一人の人物を作り上げることが多いと思う。けれど本作では、同じ時代を生きた、たくさんの「わたし」がひとつにまとまらず、バラバラの趣味や好みや、意思を持った存在として描かれる。それとは対照的に「わたしたち」として書かれるもの(わたしたちの国、わたしたちの兵隊…)は、どこか曖昧で透明で。それがとても恐ろしい。
無自覚に加害に関わってしまうこと、ずっと続くと思っていた日常がゆっくりと影をおとしていく様、「わたし」が「わたし」を保てなくなること。
銃を持たずとも、戦地に赴かずとも、誰しも戦争と無関係ではいられない。
私は2023年に、本書と対になる同名の音楽朗読劇を観ることができました。ステージ上にいた寺尾紗穂さん、角銅真美さん、浮さん、古川麦さんの身体を通してよみがえった、かつての少女たちの言葉に、心が震えました。
エリカさん、本当にすごい作品を作り上げたなと思う。8月の読書に是非。
枝葉末節な日々
今週の担当:(義)
8/9(金) エレナさんにおすすめしてもらって宿泊していたフィールド・イン・風露荘で目覚める。ぐっすりとよく眠れた。風露荘は、高田勝さんと尚子さんが始めた宿。高田勝さんは何冊も本を出版されている野鳥研究家で文筆家。そのため、宿の大きな本棚には野鳥や自然関連の書籍がずらりと並んでいた。勝さんが亡くなったあとは、尚子さんがオーナーとなって宿を運営しているが、今でも野鳥好きが全国から集っているという。朝ごはんは手作りのパンとジャムをいただいた。コケモモ、ハマナスの実・花、ワイルドベリーなどなどお庭でなっている様々な植物、果実のジャムが20種類以上。すべて尚子さんによる自家製のジャムだ。他の宿泊していた方とお話していたら、なんと人文系の版元の編集者の方でご自身も人類学の研究者だという。絶滅危惧種のシマフクロウの保全活動を通して、人と野生動物との関係をフィールドワークしながら研究しているそう。面白い話をたくさん聞かせてもらった。宿を出発し、春国岱(しゅんくにたい)へ。海と湖、干潟に囲まれた不思議な景勝地。海岸草原、湿原へと木道が引かれていて歩いていくと、真っ青の空が水面に映るその脇に鹿の親子の姿が。余りにも美しい風景で、しばし見とれてしまう。
春国岱を後にして、この旅のいちばんの目的でもある、元スタッフ・あいちゃん(田中藍衣)の展示を見に落石岬にある旧落石無線送信局へ。ここは明治41年に創設され大正12年に現在の場所に移築された日本初の国際無線局で、昭和41年に廃局となり廃墟と化していたところを、銅版画家の池田良二氏が手をいれてアトリエとして使っている場所。ここで毎年、愛知県芸とムサビの出身作家が中心に展示を行っている。今年は、田中藍衣、芦川瑞季、Dawoon Jungの3名の展覧会。窓から霧が吹き込んでくるなんとも幻想的な会場に、それぞれの作品が呼応していた。あいちゃんにとっては、この場所で感じた風景、風土が後々の制作に大きな影響を与えているらしく、大切な場所だそう。解説してもらいながら作品をゆっくり鑑賞した後、その先にある落石岬へ。濃霧が立ち込める中、絶壁から見下ろす海面。足を滑らせたらと、さすがにちょっとビビる。
その後、中山さんに教えてもらったチーズ工房chikapでおみやげを購入し、ソフトクリームを堪能、根室の市街地に向かうも、お祭りの日程とダダ被りのため、お目当ての古本屋さんも喫茶店も臨時休業だった。しょんぼりしながら斜里に戻る途中、コンビニタイエーでやきとり弁当を。このお弁当は函館のハセガワストアのやきとり弁当をのれん分けしたもの。以前函館で食べたあの味がここでも食べれるとは。
8/10(土) 6時に起床し、しれとこくらぶを7時に出発、知床五湖へ。今日はガイドさんにお願いしての知床トレッキング。今日もあいにくの濃霧。ヒグマにびくびくしながら歩く。様々なキノコや木々、熊の爪痕やアカゲラの巣穴など解説してもらいながら進んでいくと、湖がぼぉ~っと現れてくる。霧が一面に広がり見渡すかぎり真っ白な風景ではあるがこれはこれで魅力的。無事、熊にも合わず帰還。(翌日、SNSで確認したらお昼過ぎに熊が出没し、トレッキングコースも利用中止されていたみたい。。。) 汗をかいたので近場で探して見つけた、雪霞 SHIRETOKOで温泉に入る。ぬったりとした柔らかな泉質。ランチの海鮮丼もいただく。ここにもアオゾイがたっぷりと乗っていた。料理を出してくれたお母さん曰く、取れる魚の種類がここ数年でだいぶ変わってしまったとのこと。漁師さんも、海が狂っちまったと嘆いているらしい。サケやマスは年々減り、昔はそんなに取れなかったブリが今では大量にあがっているという。
15時半頃に女満別空港に到着。レンタカーを返却し、帰路につく。セントレアで夕飯を済ませて帰宅。猫たちとあつい抱擁。とりあえず洗濯機を回して干して、ぐっすり眠る。
8/11(日) 早めに出勤。溜まっている出荷作業と、大量に届いた入荷商品の品出し、整理に追われる一日。今日からお盆休みという人も多く、大きな荷物をもったお客さんもちらほら。日中はあまり仕事がはかどらず、結局23時頃まで残業に。適当にコンビニで夕飯を買って帰宅。猫たちに今日は早く帰るねと伝えたのに、申し訳ない。
8/12(月祝) 今日はゆいちゃん出勤日。北海道土産のセワポロロを渡す。イベントのためギャラリーを片付けていると、早速イトウマくんたちが準備しにやってきた。イトウマくんは、短歌グループtoi toi toiのメンバーで、バンドでベースも弾いている。『イトウマ×遠藤美月×山﨑くるみ「ながいうた みじかいうた」発売記念 音楽ライブ・短歌朗読会』という今回のイベントは、同世代の短歌をやっているミュージシャンを集めて、短歌の朗読と演奏会の企画をしたいと持ち込んでくれて実現したもの。ギャラリーに人がたくさん入ると真夏は冷房が効きづらく、少々暑い中での開催となってしまい申し訳なかったが、それでも眩しいパフォーマンスをみせてくれた。生活に創作が寄り添うことの尊さを改めて想う。
夕方、大杉さんが来て、作品集のデザインの最終確認。これで入稿できそう。
8/13(火) 定休日。今日は杏子の在所の郡上白鳥へ。昼過ぎについて、そうめんと天ぷらをいただく。気温も低くはないが、名古屋とは違い気持ちのよい風が通り抜けていく。うとうとしていたら割としっかり昼寝してしまった。お墓参りをして、八幡に向かう。やまだしん灸の山田さんたちと合流。山田さんのおじいさんのお家にお邪魔して、おじさんお手製の自慢のカレーをいただく。毎年徹夜踊りの時期に親族が集まって、ここを拠点に踊りを楽しんでいるそうで、今日も20人くらいで食卓を囲んでいた。カレーも100食分くらい(!)用意しているそう。少し街を歩いて雰囲気を味わい、週末のイベント準備のため、車に戻って2時間くらい読書。杏子は意気揚々と踊りに行った。23時頃に一旦帰宅し杏子を下して、店に行き1時間くらい入稿などの作業。24時過ぎに帰宅し就寝。さすがに疲れた。
8/14(水) 今日は店をゆいちゃんにお任せして、彦根のMiTTS Fine Book Storeさんへ。寺井奈緒美さんの『生活フォーエバー』展を開催中で、歌会のイベントも企画してもらっているのだ。朝、家を出て近所のコンビニでサンドイッチとコーヒーを買うと、杏子がコーヒーを跳ねさせ、服にシミを付けていた。やらかしの種はいたるところにある。急いで自宅に戻り、着替えて出直し。お昼くらいに彦根につき、寺井さんと合流しMiTTSさんへ。黒と茶のトイプードルのカツオくんが迎えてくれる。めちゃくちゃ大人しくて人懐っこい。理想的な看板犬。歌会の参加者は名古屋や大阪、神戸からも来てくれていた。夏をテーマに、それぞれの参加者が一首ずつ詠んできたものをみんなであーだこーだ言い合う。寺井さんにとっても初の試みでどうなるかわからなかったが終始楽しく進んだ。参加者のそれぞれの歌を、寺井Ver.として改変したものを披露。少し単語を変えたり語彙の順番を入れ替えたりするだけで、一気に寺井さんっぽくなって流石だなと思った。例えばこんな感じ、
参加者「君越しのそよ風香る電車内嗅覚消えろと思う日もある」
寺井Ver.「君越しのそよ風香る電車にて消臭力が欲しい日もある」
イベント終了後、寺井さんのパートナーで「生活フォーエバー」にも度々登場しているSさんもお店に立ち寄ると、参加者さんたちからどよめきが(笑) MiTTSの細江さんたちと楽しく打ち上げして帰路に。
8/15(木) 今日は杏子に店をまかせて、家でゆったりしたかったが、細々としなければいけない作業もあるので結局普通に出勤。何やら台風が接近中とのこと、週末の各務原のイベントに影響がないとよいのだが。イベントの進行表と簡単な台本を作成。司会進行を務めるのだが、地味に緊張してきた。夕方、近藤さんが来てくれて秋の名古屋城のイベントの打ち合わせ。秋の案件が結構重なってきている。はたして乗り越えられるのか。帰り、スーパーによって食材をあれこれ購入。空っぽの冷蔵庫に突っ込む。今夜は皿うどん。家でつくるの初めてかも。
EXHIBITION INFORMATION
~~~~~ COMING SOON ! ~~~~~
【EXHIBITION】8/19(月)~8/29(木) at ON READING GALLERY
NEUTRAL COLORS Exhibition『NC別冊「ほんとの本づくりの話をしよう」滞在制作』
※会期少し延長しました。(火曜日は定休日となりますのでご注意ください)
NEUTRAL COLORS 第6号「滞在」特集に向けて、NEUTRAL COLORSが実際にリソグラフ実機を使い印刷しつづける日々を展示します。2023年夏に東山公園を席巻した丁合ゾンビが再びやってくる。
第5号「言語」特集をリリースしたばかりのNEUTRAL COLORSが早くも6号に向けて始動。特集は「滞在」。2023年にON READINGで製作したNC別冊。そのときの滞在制作で感じた「知らない人を巻き込みながら作業する」「雑誌つくりを開いていく」。そんな楽しさがずっと心に残っていました。というわけで第2弾をふたたびON READINGにて滞在製作させていただきます。テーマは「Sound of Book Making ほんとの本づくりの話をしよう」。今回つくる雑誌は、NEUTRAL COLORSが出会う、本にまつわる人々のインタビュー集です。リソグラフ印刷、折り、丁合、綴じ作業を11日かけて行い、雑誌を完成させます。現場見学はもちろん製作に加わっていただけたらうれしいです。
【EXHIBITION】9月5日(木)~9月9日(月) at ON READING GALLERY
KOKOLIS exhibition vol.15
革鞄・革小物ブランド KOKOLIS(ココリス)15回目の展示受注会。
気付けば毎日、何年も使ってしまう。いつでも ”ちょうど良い” KOKOLISの革製品。この機会にぜひお試しください。商品はすべてセミオーダーメイド。サンプル品をベースに、革色や仕様をお選びいただけます。
♪ Now Listening
Off My Stars / Sam Blasucci
南カリフォルニアのルーツロック・デュオ、Mapacheのメンバー、Sam Blasucciによる2023年リリースのソロアルバム。AOR、ソウル、カントリーなどを下敷きにしたスウィートでメロウでブリージンな最高に心地よい楽曲群。まさに夏にもってこいの1枚です。(義)
今日のところはこのあたりで。また来週~~!
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